老後の生活費に不安を感じていませんか? 夫婦世帯の標準的な月額支出は25~30万円程度と言われており、年金だけでは不足する可能性が高いでしょう。
この記事では、具体的な生活費の内訳から必要な資金額、収支ギャップを埋めるための実践的な方法まで、専門家の知見をもとに分かりやすく解説します。
この記事を読むことで、安心できる老後に向けて、ご自身の状況に合った資金計画を立てるヒントが見つかるはずです。
老後の生活費は月々いくら?夫婦・単身の平均額と内訳を徹底解説
老後の生活費は、夫婦世帯と単身世帯で大きく異なります。 全国平均や年齢層による支出の特徴、都市部と地方部の違いなど、具体的な金額とその内訳を詳しく見ていきましょう。(金額はあくまでも平均なので目安にしてください)
さらに、介護費用や長寿リスクまで考慮した必要貯蓄額をシミュレーションし、安心できる老後の資金計画に役立つ情報をお伝えします。
老後生活費の全体像と平均的な支出内訳
総務省の家計調査によると、高齢者世帯の月間支出は夫婦世帯で約29万円、単身世帯で約15万円となっています。 これらの金額は全国平均値であり、住んでいる地域や生活スタイルによって大きく変動することがあります。
主な支出項目 | 夫婦世帯(平均) | 単身世帯(平均) |
---|---|---|
食費 | 68,000円 | 38,000円 |
住居費 | 52,000円 | 35,000円 |
光熱・水道 | 23,000円 | 15,000円 |
医療費 | 18,000円 | 12,000円 |
年齢層による支出傾向の違いも見られます。 65-74歳の前期高齢者は、趣味や交際費などの余暇活動への支出が比較的多い傾向にあります。 一方、75歳以上の後期高齢者では、医療費や介護関連費用の割合が増加する傾向があるようです。
このように、老後の生活費は世帯構成や年齢によって大きく異なります。 将来の資金計画を立てる際は、ご自身のライフスタイルに合わせた必要額を見積もることが大切です。
夫婦世帯の標準的な老後生活費と必要な月額
夫婦世帯の標準的な老後生活費は、住んでいる地域や生活スタイルによって大きく異なります。 生活必需品の支出や光熱費などの基本的な生活費を含めた月額は、都市部と地方部で差が見られます。
地域 | 標準的な月額 | ゆとり生活の月額 |
---|---|---|
都市部 | 25~30万円 | 35~40万円 |
地方部 | 20~25万円 | 30~35万円 |
標準的な生活では、食費や住居費、光熱費といった基本的な支出に加え、医療費や保険料なども考慮する必要があるでしょう。
ゆとりある老後生活を送るためには、趣味活動や旅行などの余暇費用、友人との交際費、万が一の医療費の備えとして、標準額に5~10万円程度の上乗せを検討するとよいかもしれません。
これらの支出に対し、厚生年金と国民年金を合わせた夫婦の年金受給額は平均で月額22万円程度です。 仕事などによる収入がない場合、不足分は退職金や資産運用収入で補う必要があります。(参考:厚生労働省「年金制度基礎調査」)
単身世帯における老後の必要生活費と備えるべき金額
総務省の家計調査によると、60歳以上の単身世帯における基礎的な生活費は、全国平均で月額約15万円となっています。 この金額には、食費・住居費・光熱費といった基本的な生活費に加え、通信費や交際費なども含まれています。
居住形態によっても生活費は異なり、以下のような差が生じます。
居住形態 | 月間固定費(平均) | 年間必要額(平均) |
---|---|---|
持ち家 | 12万円 | 144万円 |
賃貸 | 17万円 | 204万円 |
単身高齢者の場合、家事代行サービスや介護サービスの利用も想定しておくと良いでしょう。 これらのサービス利用料は月額2〜5万円程度かかるため、ゆとりある老後生活のためには、基礎的生活費に加えて月額5万円程度の追加的な支出を見込むのが賢明です。
老後資金の目標額として、75歳までの15年間を想定した場合、持ち家の方なら2,500万円程度、賃貸なら3,500万円程度の貯蓄が望ましいとされています。 これは予期せぬ支出や長寿リスクへの備えも含めた金額です。
老後期間の平均と総資金シミュレーション
老後期間を考える際の基準となるのが、65歳以降の平均余命です。 2023年の統計によると、65歳時点での平均余命は男性が約20年、女性が約25年となっています。 この期間に必要な生活資金を試算することが、安心な老後への第一歩となります。
老後の必要資金を具体的に試算するため、以下の基本シミュレーションをご参考ください。
世帯構成 | 月額生活費(平均) | 20年間の総額(平均) |
---|---|---|
夫婦世帯 | 25万円 | 6,000万円 |
単身世帯 | 17万円 | 4,080万円 |
長寿化が進む現代では、平均寿命を超えて生きる可能性も考慮する必要があります。 90歳まで生きた場合を想定すると、夫婦世帯で約7,500万円、単身世帯で約5,100万円の資金が必要となる計算です。
予期せぬ医療費や介護費用に備え、基本シミュレーション額に加えて、世帯年収の2〜3年分程度の追加資金を確保しておくことをお勧めします。
介護費用の実態と備えておくべき追加資金
介護費用は、要介護度や利用するサービスの種類によって大きく変動します。 厚生労働省の調査によると、在宅介護と施設介護では月額費用に明確な差が生じています。

介護の種類 | 月額費用(自己負担) |
---|---|
在宅介護(要介護3) | 4〜8万円 |
特別養護老人ホーム | 8〜15万円 |
有料老人ホーム | 15〜30万円 |
介護期間は平均で約4年半と言われており、要介護度の進行に伴い費用も増加する傾向にあります。 在宅介護から施設介護への移行を想定すると、累計で500万円以上の費用が必要になるケースも少なくありません。
介護保険の限度額を超えるサービスを利用する場合、全額自己負担となります。 訪問介護の追加利用や高級施設への入所を考慮すると、基本的な介護費用に加えて200〜300万円程度の追加資金を準備しておくと安心でしょう。(出典:厚生労働省「介護保険事業状況報告」2023年版)
老後の収支ギャップを埋める!年金プラス資金準備の賢い方法

老後の生活費を公的年金だけでまかなうのは難しい時代です。 年金受給額の実態を踏まえ、世帯タイプ別の収支ギャップと必要な追加資金を具体的に解説します。 給付金や助成金の賢い活用法に加え、定年後の収入確保に向けた現実的な選択肢まで、安心できる老後の資金計画の立て方をご紹介します。
公的年金の平均受給額と実態を図解
公的年金の受給額は、加入履歴や保険料納付状況によって大きく異なります。 厚生労働省の統計によると、夫婦世帯の標準的な年金受給月額は以下のようになっています。
世帯タイプ | 月額受給額(平均) |
---|---|
夫が厚生年金(40年加入)妻が国民年金 | 約22万円 |
夫婦とも厚生年金(40年加入) | 約26万円 |
夫婦とも国民年金のみ | 約13万円 |
共働き世帯の場合、夫婦ともに厚生年金に加入していることで受給額が増加します。 一方、専業主婦世帯では、配偶者の加入期間や収入によって受給額が変動する傾向にあるようです。
年金支給開始年齢は段階的に引き上げられており、1960年4月2日以降生まれの方は基本的に65歳からの受給開始となります。 それ以前の世代は生年月日に応じて60~65歳の間で支給開始年齢が定められています。現在では、65歳で受け取らずに66歳以後75歳までの間で繰り下げて増額した年金を受け取ることも可能です。逆に、受給開始を早めて、60歳から65歳までの間に繰り上げて減額された年金を受け取る制度もあります。(出典:日本年金機構)
厚生年金の場合、在職中の収入額によって支給額が調整される場合があるため、実際の受給額は就労状況によって変動することにご注意ください。
老後の収支バランスと必要な追加資金の算出方法
老後の収支バランスを把握するには、まず年金収入と支出の実態を正確に理解する必要があります。 厚生労働省の調査によると、夫婦世帯の標準的な年金受給額は月額22万円程度です。
高齢者世帯の平均的な月間支出は、以下のように分類されます。
世帯類型 | 月間支出 | 年金との差額 |
---|---|---|
夫婦世帯 | 29万円 | ▲7万円 |
単身世帯 | 17万円 | ▲5万円 |
この収支ギャップを30年分の老後期間で計算すると、夫婦世帯で約2,520万円、単身世帯で約1,800万円の追加資金が必要となる計算です。
ただし、必要額は生活水準や居住地域によって大きく変動します。 具体的な追加資金の算出には、現在の貯蓄額から「(希望月額支出-年金月額)×12か月×想定年数」を差し引く方法が実用的です。
さらに、医療費の増加や物価上昇も考慮に入れ、年間で3〜5%程度の余裕を持った計画を立てることをお勧めします。
年金受給開始時期による受給額の違いとメリット

公的年金の受給開始時期は、60歳から75歳の間で選択できます。月単位で選択できます。 受給開始年齢により月額が大きく変動するため、慎重な判断が必要です。以下表は4つの年齢の例になります。
受給開始年齢 | 月額の増減率 |
---|---|
60歳(繰り上げ) | 30%減(24%減:1962年4月2日以降生まれ) |
65歳(通常) | 基準額 |
70歳(繰り下げ) | 42%増 |
75歳(繰り下げ) | 84%増 |
繰り下げ受給を選択する場合は、70歳までの収入や貯蓄で生活を維持できる経済力が必要です。 健康状態が良好で長寿を見込める場合、生涯受給総額で見ると有利になる可能性が高くなります。
一方、繰り上げ受給は月額が減額されますが、早期に安定収入を得られる利点があります。 持病がある場合や、60歳時点での貯蓄が十分でない場合の選択肢となるでしょう。
受給開始時期の決定には、現在の健康状態、就労可能性、貯蓄残高、扶養家族の有無など、総合的な判断が重要です。 家計の状況に応じて、老後の収支計画に組み込んでいくことをお勧めします。
自分が何歳まで生きるかは誰にも分かりません。よって、あくまでも目安にしかなりませんが、受給開始を何歳にした場合は何歳まで生きると得かという早見表なども参考にしてみるのも良いでしょう。
繰り上げまたは繰り下げは1カ月単位で選択できます。繰り上げによる減額は1962年4月1日以前生まれの方は1カ月当たりの減額率0.5% 、それ以降の生まれの方は0.4%です。一方、繰り下げによる増額率は1カ月あたり0.7%になります。
高齢者向け給付金・助成金を賢く活用するコツ
高齢者向けの給付金や助成金は、老後の生活を支える経済的な支援となります。 これらを最大限活用することで、家計の負担を大きく軽減できます。
主な給付金制度
制度名 | 給付要件 | 給付額(月額) |
---|---|---|
年金生活者支援給付金 | 住民税非課税世帯で老齢基礎年金受給者 | 最大5,000円 |
住宅確保給付金 | 収入減少で住居を失う恐れがある場合 | 家賃相当額 |
自治体独自の支援制度も見逃せません。 多くの自治体で実施している敬老パスは、公共交通機関の利用料金を大幅に割引します。 介護予防教室やデイサービスの利用助成なども充実しています。
介護保険では、世帯の所得に応じた自己負担の上限設定があり、超過分は高額介護サービス費として後から還付されます。 住民税非課税世帯は、施設入所時の食費・居住費も軽減される制度があります。
これらの制度は申請が必要なため、市区町村の窓口で相談することをお勧めします。 要件を確認し、該当する制度は漏れなく活用しましょう。
定年後の収入確保に向けた現実的な選択肢
定年後の収入確保には、年金受給に加えて複数の収入源を組み合わせるのが有効です。 厚生労働省の調査によると、60~64歳の就業率は70%を超えており、多くの人が収入を補完しています。
退職後の具体的な収入確保手段について、リスクと期待収益の特徴を整理しました。
収入源 | 特徴 | 月額目安 |
---|---|---|
シニアパート | 週3-4日勤務が一般的 | 5-8万円 |
退職金運用 | 国債・定期預金中心 | 1-3万円 |
フリーランス | 専門性を活かした業務 | 10-20万円 |
特に60代前半は、就労による収入確保と年金受給開始時期の選択を組み合わせることで、収入を最大化できます。 年金の受給開始を70歳まで繰り下げると、65歳開始と比べて42%増額されます。
退職金の運用では、元本確保型商品を中心にしながら、一部を投資信託などの収益性の高い商品に振り分けるバランス運用が賢明です。 金融庁「資産形成の手引き」によると、長期・分散投資で年率3~5%程度の収益を目指すことが現実的とされています。
将来不安を解消する老後資産形成3つの具体的プラン

老後の生活費を安定的に確保するためには、長期的な資産形成が欠かせません。 つみたてNISAによる着実な積立投資、iDeCoの税制優遇を活用した運用、終身保険による確実な資金準備。 それぞれの特徴を理解し、自分に合った方法を組み合わせることで、将来に向けた効果的な資産形成が可能になります。
このセクションでは、3つの具体的な資産形成プランについて、メリットや注意点を詳しく解説していきます。
1. つみたてNISAで始める堅実な資産形成術
つみたてNISAは、老後資金形成の入り口として最適な投資手法の一つです。 年間120万円までの非課税投資枠を活用でき、20年という長期の非課税期間で資産を育てられます。
投資初心者でも安心して始められる特徴として、購入できる商品が厳選された投資信託に限定されている点が挙げられます。 特に、世界の株式市場全体の値動きに連動するインデックスファンドは、分散投資効果が高く、手数料も抑えられます。
投資期間 | 毎月1万円積立時の資産額 |
---|---|
10年 | 約140万円(年率5%の場合) |
20年 | 約370万円(年率5%の場合) |
定額積立投資により、相場が下がった時により多くの口数を購入できる平均取得単価の低減効果も期待できます。 長期投資による複利効果で、老後資金の着実な形成が可能となるでしょう。
あくまでも長期間継続することが見込まれてるものであり、目先の相場の上昇や下落に一喜一憂しないことが大切な心構えです。ただし、国が推奨しているとはいえ、元本保証されるものではないので、あくまでも余裕資金の範囲で自己責任で行うという意識は必要です。
現在、1人につき1つの口座でしか行うことができません。銀行や証券会社など多くの金融機関で実施していますが、投資先や手数料などぞれぞれ状況が異なりますので、開始する口座は自分に合ったものを選びましょう。
2. iDeCoを活用した税制優遇と将来設計
iDeCoは老後の資産形成に向けた有効な選択肢です。 掛け金が全額所得控除となる税制優遇に加え、運用益も非課税となるため、長期的な資産形成に大きな効果が期待できます。
加入者区分 | 月額上限 |
---|---|
会社員(企業型DC無) | 23,000円 |
専業主婦(夫) | 27,600円 |
自営業者 | 68,000円 |
例えば、年収500万円の会社員が毎月2万円を拠出した場合、年間24万円の所得控除により約6万円の節税効果が見込めます。
受給開始は原則60歳からですが、一時金・分割・年金の3つの受け取り方法から選択できます。 年金受給を選択すると公的年金等控除が適用され、税負担を抑えられる利点があります。
ただし、原則60歳まで中途引き出しができない点には注意が必要です。 長期的な資産形成のツールとして、計画的な活用を心がけましょう。
3. 終身保険による確実な老後資金の確保
終身保険は、死亡保障を抑えて貯蓄性を重視した商品設計にすることで、確実な老後資金の準備が可能です。 保険料の一部を特別勘定で運用する「変額終身保険」なら、資産形成機能も期待できます。
保険料の払込期間と受取時期の設定は、将来受け取る金額に大きく影響します。 以下の表は、月額保険料3万円で契約した場合の受取額の目安です。
払込期間 | 受取開始年齢 | 概算受取総額 |
---|---|---|
20年 | 65歳 | 1,200万円 |
30年 | 70歳 | 1,800万円 |
医療保障特約や介護保障特約を組み合わせることで、入院や介護といった老後の不安要素もカバーできます。 ただし、特約を付けすぎると保険料負担が重くなるため、必要な保障を見極めることが重要です。
契約時には、払込期間中の収入見通しや老後の生活設計を踏まえ、無理のない保険料設定を心がけましょう。 解約返戻金は払込保険料を下回る場合が多いため、長期継続を前提に検討することをお勧めします。
まとめ
老後の生活費は世帯構成や生活スタイルによって大きく変わります。 平均的な支出額と必要な貯蓄額を知り、早めにライフプランを立てることが重要です。必要に応じて、体力やライフスタイルに合った働き方で収入を得ることも視野に入れておきましょう。
自身の理想とする老後の暮らしを実現するため、早めの資金計画と準備を始めましょう。 状況に応じた適切な対策を講じることで、安心できる老後生活への第一歩となるはずです。