「この年齢になって、改めて自分らしく生きたいと思う。でも、自分にとって何が大切なのか分からない……」
そんな想いを抱えている方も多いのではないでしょうか。
実は、人生の転機こそ、自分の価値観を見つめ直すチャンス。
価値観が「見える」ようになると、これからの時間の使い方や選択に、自然と納得が生まれます。
この記事では、シニア世代のための「価値観の棚卸しワーク」を紹介しながら、
自己理解を深める入り口となる問いかけや、日常に活かすヒントをやさしく解説していきます。
自分を見つめ直す第一歩として「価値観」を棚卸ししよう
定年や子育ての一区切りを経て、これからの人生をどう生きていこうかと考えた時、ふと「自分にとって何が大切なのか分からない」と感じることがあるかもしれません。
これまで多くの役割を果たしてきたあなただからこそ、今は「自分自身のこと」を見つめ直す大切なタイミングです。
そんな時に役立つのが、「価値観の棚卸し」です。
自分の内面と向き合い、「本当に大切にしたいこと」を見つけることで、心のモヤモヤが整理され、これからの人生にも納得感が生まれてきます。
この章では、「とらわれ」を手放すための視点や、なぜ価値観を明確にすることが自己理解につながるのか、そして人と比べずに自分を大切にするヒントをお伝えします。
まずは、自分自身の本音に耳を傾けることから始めてみましょう。
「とらわれ」を手放すために「大切なもの」を再確認
心を縛っている「とらわれ」から自由になるためには、「何を手放したいか」よりも、「何を大切にしたいか」に目を向けることが効果的です。
過去の失敗や人からの評価などにとらわれてしまうのは、そこに意識が引っ張られてしまっているからです。
そんな時こそ、自分の価値観——たとえば「安心」「自由」「家族」「挑戦」など——に目を向けることで、自然と「それ以外」は自分にとって重要ではないと気づけるようになります。
何を手放すかよりも、何を守りたいかを見つける。
それが、「とらわれ」の連鎖から抜け出す第一歩です。
なぜ価値観の棚卸しが自己理解につながるのか?
価値観とは、自分にとって「何が大切か」「どうありたいか」を判断する「内なる基準」のことです。
この基準が曖昧だと、他人の意見や状況に振り回されやすくなります。
一方で、自分の価値観が見えてくると、「なぜそれを選びたいのか」「なぜ違和感があるのか」が分かり、物事の判断がスムーズになります。
特にシニア世代にとっては、社会的な役割や忙しさから少し距離を置ける今こそ、「これからの人生で何を大切にしていきたいか」を見つけるのにぴったりの時期です。
人と比べず、自分の価値観を信じていい理由
これまで私たちは、無意識のうちに「普通こうだから」「みんなこうしてるから」と、他人や世間の基準に合わせて生きてきた場面が多かったかもしれません。
でも、価値観は人それぞれ違って当然です。
ある人にとっては「人とのつながり」が大事でも、別の人にとっては「自由な時間」が大切かもしれません。
どちらが正しくて、どちらが間違っている、ということはありません。
むしろ重要なのは、「あなたにとって何が大切か」を見つけることです。
人と比べるのではなく、自分の感覚や選択に納得できるようになること。
それが、これからの人生に安心感と希望をもたらしてくれるのです。
過去の体験を振り返って、自分にとって大切なことを探る

これまでの人生を振り返ると、嬉しかったこと、悔しかったこと、心が大きく動いた瞬間がきっとあったはずです。
そうした体験には、あなたにとって本当に大切な価値観が隠れています。
過去の出来事にもう一度向き合うことで、「なぜあの時、そう感じたのか」「自分は何を大切にしていたのか」が見えてくるのです。
ここでは、そうした価値観を見つけるための3つの視点をご紹介します。
一緒に、自分の中にある大切な思いや考えに気づいていきましょう。
印象に残っている出来事から感情を思い出してみよう
あなたの記憶の中に、「あの時は本当にうれしかった」「悔しくて忘れられない」という体験はありませんか?
こうした強く残っている出来事には、あなたにとって大切な価値観が浮かび上がるヒントがあります。
たとえば、「誰かに感謝されたことが嬉しかった」なら、「人の役に立ちたい」という価値観かもしれません。
「自分の意見を尊重してもらえた」と感じたなら、「自己表現」や「尊重されること」があなたにとって大切なのかもしれません。
体験の中にある感情を丁寧にたどることで、自分自身の価値観が少しずつ見えてきます。
「キャリアの棚卸し」も自己理解のヒントになる
仕事や社会的な役割を通して、私たちは多くの経験をしてきました。
そうしたキャリアの棚卸しも、自己理解にとって大きな手がかりになります。
「どんな仕事にやりがいを感じたか」「どんな場面で力を発揮できたか」を振り返ってみてください。
すると、自分が大切にしてきた働き方や姿勢、得意だったこと、苦手だったことが浮かび上がってきます。
キャリアは過去のことではなく、これからの生き方にも影響する「自分らしさ」の軸です。
今こそ振り返る価値があるのです。
ネガティブな経験にも大切な気づきが眠っている
思い出すのがつらい経験の中にも、価値観を見つける手がかりはあります。
たとえば、「あの時、無理をして体調を崩した」という出来事から、「健康第一でいたい」という思いが強くなったかもしれません。
あるいは、「人の意見に流されて後悔した」という経験が、「自分の考えを大切にしたい」という価値観に気づかせてくれたこともあるでしょう。
過去の出来事を単なる失敗とせず、「その時、何を大切にできていなかったか」という視点で見ると、そこにはこれから大切にしたい「あなたらしい価値観」が浮かび上がってくるはずです。
「価値観リスト」と質問ワークで、自分の軸を明確にする
過去の体験を振り返っても、なかなか自分の価値観が見えてこないと感じることもあるかもしれません。
そんな時は、あらかじめ用意されたリストや問いかけを活用することで、自分の内面を見つめるヒントが得られます。
「なんとなく大事にしている気がするけど、うまく言葉にできない」と感じている方にも、このシニア向けの自己理解ワークを通じて、心の中が整理されていく感覚を味わっていただけるはずです。
ここでは、価値観に気づくための具体的なリストと、問いかけを通じて「自分の軸」を見つけていく方法をご紹介します。
価値観リストを眺めて「これが自分かも」と感じる言葉を探す
まずは、自分で一から考えようとせずに、既にある「価値観リスト」を眺めてみることをおすすめします。
たとえば「安心」「自由」「挑戦」「誠実」「健康」「愛情」など、価値観にはさまざまな言葉があります。
その中で、目に留まったもの、なんとなく気になるものがあれば、それがあなたの価値観の候補かもしれません。
「これが自分かも」と思える言葉に〇をつけるだけでも、心の中が少し整理されていきます。
※価値観リストは以下に記載(開閉式)したもの、もしくは下記のPDFをご利用ください。(同じもの)
価値観リスト(30個)※クリック(タップ)開閉してください
以下のような価値観の中から「これだ」と感じるものに〇をつけてみましょう。
自分の言葉で言い換えてみたり、似た言葉を並べてみたりしても構いません。
- 安心:心穏やかに過ごせること、安全が守られていること
- 自由:他人などに制限されずに自分で選べること
- 健康:心身ともに健やかでいられること
- 家族:家族とのつながりや支え合いを大切にすること
- 家族との絆:血縁を超えた温かな結びつき
- 友情:信頼できる友人との関係を大切にすること
- 信頼:他人を信じ、自分も信じてもらえること
- 感謝:日々の出来事や人に対して感謝の気持ちを持つこと
- 成長:昨日よりも少しでも前進し続けること
- 学び:新しい知識や経験を得ること
- 挑戦:未知のことに勇気を出して取り組むこと
- 貢献:誰かの役に立つこと、社会に関わること
- 調和:周囲と心地よく共存すること
- 創造性:自分なりのアイデアや表現を生み出すこと
- 誠実:正直で真面目に向き合う姿勢
- 自立:他人に依存せず、自分の意思で行動すること
- 穏やかさ:落ち着いた気持ちや静かな日々を大切にすること
- 共感:他人の気持ちに寄り添うこと
- 自己表現:自分の考えや感情を素直に伝えること
- 楽しさ:日々に喜びやワクワク感を見つけること
- 心のゆとり:焦らず、ゆったりとした気持ちでいること
- 探求心:物事の本質を知りたいという好奇心
- 他者への思いやり:相手の立場に立って考える気持ち
- 納得:自分でしっかりと理解し、受け入れられる感覚
- 好奇心:新しいことを知ることへの前向きな興味
- 責任感:やるべきことをきちんと果たそうとする心
- 自然とのつながり:自然との関わりを大切にすること
- 支え合い:お互いに助け合う関係を築くこと
- 目的意識:自分の行動に意味や目標を持つこと
- 笑顔・ユーモア:笑いや軽やかさを大切にすること
質問ワークで「なぜそれが大切なのか?」を掘り下げてみる
リストで選んだ言葉をもとに、なぜそれが自分にとって大切なのかを深掘りするワークを行ってみましょう。
たとえば「自由」を選んだなら、「どんな時に自由を感じたか?」「なぜ自由がないと苦しく感じるのか?」と問いかけてみます。
このように掘り下げていくことで、表面的な印象ではなく、あなたにとっての「本当の意味」としての価値観が明確になっていきます。
自分なりの答えが見えてくると、それは単なる言葉ではなく、あなたを導く「軸」として心に残るものになります。
言葉の定義は自由でいい。あなたにとっての意味を大切にしよう
価値観リストにある言葉の意味は、人によって微妙に異なります。
たとえば「愛情」といっても、「家族と過ごす時間」と感じる人もいれば、「誰かを支える行動」と捉える人もいます。
どの定義が正しいかではなく、あなたにとってその言葉が何を意味するのかが大切なのです。
他人の説明や一般的な定義にとらわれず、「自分にとっての意味」を言葉にしてみることが、深い自己理解につながります。
それは、あなた自身の生き方を支える確かな土台になります。
選んだ価値観を深掘りして、行動につなげるヒントにしよう

自分にとって大切だと感じる価値観が見えてきたとしても、それを日々の行動にどう結びつければよいのか分からないという声も少なくありません。
ただ眺めるだけでは、せっかくの気づきもすぐに薄れてしまいます。
大切なのは、その価値観を実際の「選択」や「時間の使い方」に落とし込んでみること。
この章では、選んだ価値観を深掘りしながら、より納得感のある毎日を送るためのヒントをご紹介します。
価値観と「これからの時間の使い方」をつなげて考える
シニア期は、自分の時間をより自由に使えるようになる貴重な時期です。
この時間を「どう使いたいか?」と考える時、選んだ価値観をヒントにすると方向性が見えてきます。
たとえば「学び」を大切にしているなら、読書や講座の受講に時間を割く選択ができますので、「オンライン講座の受講を検討する」「地域の生涯学習センターに問い合わせる」など、一歩踏み出すことも良いでしょう。
また「人とのつながり」が価値観であれば、地域の活動や友人との交流に時間を使うことがしっくりくるかもしれません。
価値観と日々の行動のつながりを意識することで、より納得感のある時間の使い方ができます。
「自分の納得」がある選択を意識する
どんなに世間的に正しそうな選択でも、自分の価値観に沿っていないと、どこかで違和感やモヤモヤが残ってしまうものです。
逆に、人にどう見られても、自分の中に「これでいい」と思える感覚があれば、心はずっと穏やかでいられます。
「これは自分にとって納得のいく選択か?」と、一度立ち止まって問いかけてみましょう。
そうすることで、価値観に根ざした行動が習慣として身についていきます。
価値観を地図にする「マップ化」という整理法
複数の価値観が見えてきたら、それらを図や表で整理する「マップ化」を試してみるのもおすすめです。
マップ化といっても特別な方法が必要なわけではありません。
紙に価値観を書き出して線でつないだり、優先順位をつけたり、カテゴリで分けたり――
自分が見やすく整理できれば、やり方は自由です。
例えば、「安心」と「挑戦」という一見異なる価値観があった場合、「まず安心できる環境を整えたうえで新しいことに挑戦する」というふうに、つながりや順序が見えてくることがあります。
また「健康」「自由」「成長」といった価値観がある場合には、「健康を大切にするのは、自由に動ける日々を守るため」など、自分なりのつながりや意味づけが見えてくることもあります。
マインドマップのように、中心に自分を書き、その周りに価値観を広げて線で結ぶ方法を使うのも一つの手です。
大事なのは、視覚的に整理することで、自分の中にある価値観同士の関係性や優先度が見えてくることです。
こうすることで、「これからの選択をどうすれば自分らしくできるか」のヒントが、より具体的に感じられるようになります。
※参考までに、価値観のマップ化の例として、「価値観マップシート(シンプル版)PDFファイル」を下記にてご用意しました。必要に応じてご活用ください。

価値観を日常に活かす3つの実践アイデア
価値観を知っただけで満足してしまうのは、少しもったいないことです。
本当に大切なのは、気づいた価値観を日々の暮らしの中で「意識して使っていくこと」。
意識する時間が増えれば増えるほど、選択に迷わなくなり、あなたらしい生き方が自然と形づくられていきます。
ここでは、そんな価値観を無理なく日常に取り入れていくための、簡単で実践的なアイデアを3つご紹介します。
毎朝1分、自分の価値観を思い出してみる
朝の支度の中で、ほんの1分でも「自分にとって大切なことって何だっけ?」と意識してみる時間をとってみましょう。
朝に価値観を思い出すことで、その日の行動や考え方の軸が自然と定まっていきます。
たとえば「誠実さ」が自分にとって大切なら、「今日は誰かとの約束を丁寧に守る」といった小さな意識が生まれやすくなります。
習慣的に価値観を思い出すことが、行動への橋渡しになるのです。
小さな選択こそ、価値観を意識してみよう
価値観は大きな人生の決断だけでなく、日常の何気ない場面にも活かすことができます。
たとえば、昼食のメニュー選びや、ちょっとした予定の組み方にも、「自分の価値観に合っているか?」という視点を加えてみましょう。
「健康」を大切にしているなら栄養を意識してみる、「ゆとり」が価値観なら予定を詰めすぎない選択をしてみる――。
小さな選択の積み重ねこそが、価値観を生きるということなのです。
月に一度、価値観のメモを振り返る時間をつくる
日々の中で価値観をどう意識できたか、またどんな場面でズレを感じたかなどを、簡単にメモしておくのもおすすめです。
そして、月に一度そのメモを見返す時間をとることで、自分の中で価値観がどのように根づいてきたかを確認することができます。
うまくいかなかった時期があっても、それを含めて「自分らしさ」を見直す良い機会になります。
定期的な振り返りが、価値観とのつながりをより強くしてくれるのです。
まとめ
シニア期を迎えた今、これからの人生をどう過ごすかを考える時、自分の価値観を見つめ直すことはとても大切なプロセスです。
それは過去の経験を振り返り、自分が何に喜びを感じ、何に違和感を抱いてきたのかを知ることでもあります。
この記事で紹介したようなワークや問いかけを通じて、あなたにとって大切な価値観が少しずつ見えてきたのではないでしょうか。
そしてその価値観は、あなたの行動の軸となり、選択や時間の使い方に確かな方向性を与えてくれるものになります。
大切なのは、完璧に言語化することではなく、日々の中で価値観を「意識し続けること」。
ちょっとした選択の場面でも、「これは自分の価値観に沿っているか?」と問いかけてみること。その積み重ねが、あなたらしい人生を形づくっていく大きな力になるはずです。
ぜひ今日からできる一歩を、あなた自身の価値観とともに踏み出してみてください。